岩手県立大学総合政策学部/三陸沿岸災害復興の総合政策学

産業経済の復興研究班

「産業経済の復興研究班」は、被災した沿岸地域の漁業・加工・販売に関する水産業クラスターを基幹とする産業経済の復旧・復興条件を明らかにすることを通じて、今後の復興ビジョン及び実施計画に関わる包括的な理論体系を提示することを目的としている。

平成24年度

(1)「産業経済の復興研究班」は、@計データを用いた漁業生産関数の計測及び現場ニーズの把握、A復旧復興などの資料収集、Bアンケート調査に関する調査研究を予定していた。この内、@については、高嶋により総合政策学会Working Paper Series No.83:陸前高田商工会・経営動向調査の分析―東日本大震災からの経済復興のために―として結果が報告された。現場ニーズの把握については、主に、陸前高田商工会の復興ビジョン策定以降の動向を追跡調査している。この間、商工会以外のグループによる活動への調査も始めた。具体的には、震災後初期の段階で仮設店舗を復旧させた事例(洋菓子店、陸前高田市)への調査を行った。調査では、仮設店舗を復旧させる際にどのような過程で実現したのかについて主に聞き取り調査を行った。

(2)水産業の復興過程分析では、岩手県庁、岩手県漁連への調査は実施し、すでに調査を行っている陸前高田地域の他、宮古、釜石、大船渡への調査を実施した。岩手県内での代表的な水産業の地域は、宮古、釜石、大船渡・陸前高田であるが、今後は、平成24年度実施した漁協への調査を基に加工・流通業者への調査を加え、地域特性を踏まえた産業経済の復旧・復興に関する研究を行う。

平成25年度

 平成24年度に実施した漁協への調査を基に加工・流通業者への調査を加え、地域特性を踏まえた産業経済の復旧・復興に関する研究を研究している。

(1)統計データを用いた漁業生産関数の計測及び現場ニーズの把握に関して、陸前高田に加えて、釜石、宮古地域の分析を行い、3地域の比較分析を研究中である。

(2)復旧復興などの資料収集に関しては、平成24年度に3地域の概要を把握したことから、平成25年度は、主に釜石、宮古地域の商工会議所の資料を収集する予定である。

(3)アンケートについては、平成24年度に予備調査を行ったことを踏まえ、調査対象者へのAHP法を用いた地域の復旧・復興に関わる評価を行う予定である。

(4)3地域の産業クラスターに関する「戦略的リスク」に関する分析を行う。このようにして、平成25年度は、生産関数及びリスク分析を陸前高田地域に加えて2地域を加えた比較研究を進めている。